ずっとのちのひとびとに-混声合唱とピアノのための

作曲者 吉田桂子先生が語る ワンポイント アドヴァイス

「ずっと」の歌い出しは跳躍音程です。曲中に「かなしみ」「いちばん」など跳躍が多く出てきます。「ずっと」の跳躍は6度という音程(2音間の距離)ですが、この6度について少しお話しますと・・この音程は、西洋音楽史におけるロマン派時代頃から好んで使われ(もちろんそれ以前にも使われることはありましたが)、『愛の6度』などと呼ばれる程、チャーミングで表情豊かな旋律がたくさん登場します。例えば、メンデルスゾーン「歌の翼に」、ショパン「ノクターン第2番変ホ長調」、リスト「愛の夢」などなど…もこの6度で音楽が開始されます。(他にも「見上げてごらん夜の星を」や美空ひばりの「川の流れのように」のサビ部分、その他多数に聴く事ができますよ。探してみるのもおもしろいですね。)このように並んだ曲を聴いてみると、この6度を歌ったり演奏したりするときの感情というのは、大きな感動を伴うことがわかると思います。ですから、この「ずっと」の6度を歌う際ぜひお願いしたいのは、歌い出し、それ以前の前奏から気持ちが高まった感動した状態でいて欲しいのです。さらには「ずっと」の促音「っ」をどうしたらより響かせることができるのかもぜひ研究してください。その次の「ちがった」も、音の長さを数えることと、やはり促音を響かせることに注意してください。
 「芸術とがある」の「芸術」とは(歌をうたう)皆さんのことです。歌をうたう人、詩を作る人、日常の中に小さな歓びを見いだし懸命に生きるすべての人が芸術家です。詩人ギュビックは「日常の中にこそ芸術(詩)がある」と言います。
(以下、埼玉合唱団演奏会プログラムに寄せた拙文から引用)
・・詩人ギュヴィックは言う、『詩はそれがあるから生きていられるものなのである』と。日常の中にひとつの音調を見つけだすこと、いくらかの感動を見つけることがポエジーなのだと。生きる意欲が湧く甘露のような液体が流れる水脈が自己の奥底にあるということに気づいた人は、詩をつくり、歌をうたう。・・(以上)
ぜひとも、プライドをもって大切に歌詞の「芸術」を歌ってほしいのですが、その思いが強すぎて「芸術」の「げ」で鼻息が荒くなってしまっていますね。子音をしっかり発語をして、大切な言葉だと思って歌ってください。

 19小節にある「< >」は表情的アクセントの一種。合唱曲によく見られる記号で、作曲家の三善晃氏が多く使っていたので俗に「三善アクセント」などと呼ばれることもありますが、この曲中にも2か所あります。この記号が出てきたら音をぶつけずに大切に歌って欲しい箇所と心得て歌ってください。
 「だろうとき」は、言葉を繋げて一つのフレ−ズとして歌ってください。拍子はここから8分の6拍子、歌いながら1拍内を3つ数えること。このとき次の間奏22小節〜を引き出すように歌ってください。間奏では後に出てくるこの曲のサビとも言える旋律を先にピアノが歌います。1拍の中に3拍子を内包し、踊りのリズム(ワルツのような)を含みつつ大きくは2拍子で進んでいきます。そんな間奏に想いを馳せる時間と考えてください。(実はこの箇所、当初4分の2拍子のまま書いていたのですが、次の8分の6拍子を先取りするとより一層次のフレーズへの時空の変化が表現できると途中書き改めたのでした。)

 「すこしばかり」の「ば」は強調しない。「ばかり」と言葉を流してください。「〜おれたちのことを」までを話すように(parlando)、「おもいみてくれ」で歌う(canto)、「まったく」は話すように。このようにparlandocantoを繰り返して、メリハリをつけてください。
 最後に、間奏と同じ旋律38小節からがこの曲のメインテ−マです。このテ−マに向かって気持ちを高めていってください。ソプラノとアルトパートは、オクタ−ブの跳躍で、さきほどお話した6度よりも高く飛ばなくてはなりません。ここは発声的にも難しいと思いますが、とにかく感動、感動の
嵐が心の中に起こっていて欲しいです。

  以上、2014年6月21日のレッスンを書き下ろしたものに、吉田桂子先生ご本人が補筆されたものです。吉田桂子先生、ありがとうございました。


 









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